【商慣行の是正】ガス料金から見るモノの価値について
普段、当たり前のように利用しているYouTubeなどの映像や音楽のコンテンツを見ていて、今の時代の子供は色んなモノが無料で楽しめて良いな、と思う反面、学校帰りに好きなアーティストのCDの発売日にレコード店に立ち寄るような、あのワクワク感を味わう機会は減ってきているのだろうなと思います。あれほど聴きたかったあのアーティストの新譜も、レコード店に足を運んで何千円とお金を支払うことなく、いつでも無料、もしくはサブスクの少額の料金、さらには現金でもなく貯めているポイントで決済して聴くことができます。商売の方法が変わったことで、明らかにモノの価値が変わりました。
先日、LPガスの法改正についてのニュースがありました。2027年施行を目指した、集合住宅におけるガス料金に直接関係のない設備の費用を上乗せすることを禁止する、といった内容のものです。LPガスは全国で4割にもわたる約2,200万世帯が利用しております。その中の、主に賃貸集合住宅に、無償で給湯器やエアコン、インターフォンなどを設置し、その費用をガス料金に反映させて入居者から回収する商慣行がありました。
はじまりは、おそらくですが、ある気前のいいガス屋さんが、お客様から作業の依頼を受けた際に、ガスを使ってくれてるから、作業のお代はいいですよ。といったような、お客様に喜んでもらいたいところから来ていたのではないでしょうか。こういった対応は、現在でも、またガス会社からでなくても、少なからず恩恵を受けた方もいらっしゃるかと思います。そんな気前のいい対応が、いつしか設備や商品などのモノの譲渡に派生していき、営業の手法として使われるようになりました。投資と回収の捉え方になり、消費者にはモノの直接的な請求は無いにしろ、採算を合わせるためのガス料金を設定する、といったように、正当な契約としてのガス料金の取り決めの中にも、不透明な部分が浮き出てているのも実情です。あらゆる商品の値上げが相次ぐ中、消費者保護の観点から、その商慣行にようやく終止符が打たれようとしています。
世の中に、コストが掛からないサービスはありません。例えば、ECサイトの送料無料の表示も、携帯電話会社の1円スマホも、どこかで無理が生じてしまうので度々話題に上がります。他社との競争や、消費者へのアピールでコストカットを追求したとしても、線引きを見誤ってしまうと、商売を見直すタイミングが必ず訪れます。
LPガスと似ているエネルギーに都市ガスがあります。一見競合に見られがちな双方ですが、実はそれぞれの棲み分けができた役割を担っております。山、川、谷や起伏の激しい地域などの、都市ガスを引くことができない地域の人々の暮らしに、LPガスは必要です。また、都市部でも立地上、都市ガスを引くことができない地区もあります。災害時など、有事に能力を発揮できるエネルギー供給の「最後の砦」とも呼ばれており、都市ガス地域でもLPガスを利用されている方もいらっしゃいます。
その社会的な役割を担うLPガスに、ここ数年で大きな動きがあります。2027年の法改正に向けて、無償で提供していた給湯器やエアコンなどの設備の価値は、本来のあるべき形に戻り、今後のガス会社は、良いサービスを継続的に提供していくために、何にコストを掛けるかという方向にシフトしていきます。どんな方法にせよ、生活のインフラとして、適正な価格と安全な対応で、お客様が安心して暮らせるよう、最大限の努力と工夫ができる会社が選ばれていくように感じます。
お客様が求める「安心」を何で表現できるか。その挑戦をし続ける会社が存在します。ご興味を持っていただけると幸いです。