【日本お風呂昔ばなし】江戸時代からつづく憩いの場所
クリスマスが過ぎ、すっかり年末の落ち着いた雰囲気になりました。
大晦日には銭湯へ行って、一年の疲れを汗と一緒に流して、気持ちよく新年を迎えよう、という方も少なからずおられるのではないでしょうか。
大晦日の入浴は「年の湯」と呼ばれ、1年の垢を落とすと縁起がいいと言われている風習もあるようです。
そんなお風呂好きな日本人ですが、昔から今のようにゆったりお湯に浸かる文化があったかというと、そうでは無いようです。
お湯を沸かすには、まず水を汲み、薪を準備して、火をつけて、たいへんな手間がかかっておりました。五右衛門風呂や鉄砲風呂の時代ですね。
お湯が貴重だった江戸時代の銭湯は、立ち上る蒸気の中、浴槽に膝をひたす程度に湯を入れた浅い風呂に入りました。今でいう、低温サウナのようなイメージでしょうか。出入口は蒸気が逃げないよう低くなっていて、お客さんは屈んで入りました。窓もないため、光は差し込まず、ほとんど何も見えない状態ですが、そこは人々の憩いの場。江戸の銭湯好きが、それは繁盛していたようでした。
今のようにガスで沸かすようになったのは、明治時代からで、それでも当初は、自宅に湯舟はなく、お風呂と言えば銭湯だったそうです。週に何度か銭湯通いをして、家族やご近所さんとコミュニケーションを楽しんでおりました。明治時代末期には、ガス風呂釜の「早沸釜」が開発され、1970年代にはお家でお風呂に入る時代が到来しました。
現在では、一家に一台給湯器があり、スイッチひとつで当たり前に浴槽にお湯が貯まり、自動で止まります。お湯が冷めれば、自動的に追い炊きをしてくれます。お湯が少なくなれば、自動で足し湯もしてくれるようになりました。
便利で快適な世の中になりましたが、昔からお風呂は、憩いの場所にしていたことは、現在の私たちの心境でも変わりはありません。
外出をして人前でマスクを外すのも引け目を感じてしまう一年でしたが、景気も含め、少しずつ、本来の形に戻りつつあるように感じます。
来年は、黙って湯舟に浸かる黙浴ばかりではなく、近所の人や常連さんとも気軽に話をする銭湯の風景が見られる一年になると良いですね。
それでは、良い年をお過ごしください。